機能性構音障害(側音化構音を含む)については次のような簡易鑑別法があります。
声が出なかったり詰まったりすることが問題ですか?
YES → 機能性構音障害ではなく、他の障害と思われます。
NO, それが問題ではない。
↓
全体的に発音が正しくない・あいまいですか?
YES → 他種の構音障害と思われます。
NO, 決まった音だけが正しくなく、他は正常である。
↓
日によって、場面によって、あるいは薬物の影響などによって言えるときと言えないときがあり
ますか?
YES → 他の障害の可能性があります。
NO, 大体いつも言えない。
↓
緊張や早口が原因で発音が悪くなっていると思いますか?
YES → 構音障害(狭義)ではありません。他の障害または正常の範囲内の可能性があります。
NO, そうは思わない。
↓
周囲の人の多くも同じ発音をしますか?
YES → 構音障害ではありません。方言音と思われます。
NO, しない。
↓
問題音は一つずつ丁寧に発音すれば正しく言えますか?
YES → 他の障害または正常の範囲内の可能性があります。(※1)
NO, 一つずつ丁寧に発音しても完全には正しくならない。
↓
問題の発音は何かのきっかけで、あるいはある時期から始まりましたか?
YES → 他の構音障害の可能性があります。
NO, 思い当たるきっかけがなく、ほぼ最初からすでに悪い発音であった。
↓
口腔内の病気や異状(※2)、舌の麻痺、その他の麻痺、難聴、言語発達遅滞(※3)が原因だと
診断されたことがありますか?
YES → 他の構音障害の可能性があります。
NO, そのようなことはない。
↓ (舌の長さ、舌小体(帯)、歯並び、噛み合せに異状があっても次に進んで下さい。(※4))
↓
目を閉じて耳だけで他人の「カ、サ、シャ、タ、チャ、ハ、パ」が完全に聴き分けられますか?
NO, できない。 → 他の構音障害と思われます。
YES. 聴き分けられる。
↓
口を軽く開け(上下の前歯に指1本挟む程度)、舌先を上の歯茎に当てることができますか?
NO, できない。 → 他の構音障害と思われます。
YES. できる。
↓
「ア、エ、オ、ハ、ヘ、ホ、マ、メ、モ、ワ、バ、ベ、ボ」を正しく言うことができますか?
NO, できない。 → 他の構音障害と思われます。
YES. 正しく言うことができる。
↓
機能性構音障害の可能性が大です。
↓
問題音は「ラ、ル、レ、ロ」ですか?
YES → 機能性もありますが、他の構音障害または正常の範囲内の可能性もあります。(※5)
NO, 「ラ、ル、レ、ロ」ではない。
↓
問題音は上記の表の○印に当たりますか? (表参照)
NO → ケースによって異なりますが治る可能性が大です。
YES.
↓
確実に治る種類のものと考えられます。(※1)一音ずつなら言えるのに「させていただく」「バナナなど」「られねばならぬ」などになると言いにくい、とい
うのは構音障害ではありません。ただ、イ段の音が連続すると言いにくいという場合は次へ進んで下さい。
(※2)口蓋裂の手術が完全に終了しており、かつ、発音補助器具(スピーチエイド、パラタルリフトなど)の装着が不
要の場合は一応次へ進んで下さい。ただし、場合によっては指導に時間がかかることがあります。
(※3)小さい時に言葉の出るのが遅かったということは問題ありません。現在、年齢相応の言葉の理解力があれば次へ
進んで下さい。
(※4)舌の長さ、舌小体(帯)、歯並び、噛み合せに異状(いわゆる乱杭歯・出っ歯・受け口など)があると診断され
た方でもほとんどのケースでは歪
んだ発音の重大原因ではなく、手術や歯列矯正をせずに発音を治すことが可能です。次へ進んで下さい。
(※5)ケースによって改善の見込みが異なります。
「機能性」以外の構音障害には「器質性構音障害」、「運動(麻痺)性構音障害」、「聴覚性構音障害」があります。
それぞれ発音に必要な器官、神経や筋肉、聴覚に医学的な問題があって起こるものです。これらについては音声学的
構音指導のみでは十分な改善は見込めません。別途専門の医療機関やリハビリ専門施設等にご相談下さい。