くがつよっか 、日曜。  次の朝、空はよく晴れて谷川はさらさら鳴りました。一郎は途中でカスケと佐太郎と悦治をさそって、一緒に三郎のうちの方へ行きました。学校の少し下流で谷川をわたって、それから岸でやなぎの枝をみんなで一本づつ折って 青い皮をくるくる剥いで鞭をこしらえて手でひゅうひゅう振りながら上の野原への路をだんだんのぼって行きました。みんなは早くも登りながら息をはあはあしました。「又三郎ほんとにあそごの湧水まで来てまぢでるべが。」「まぢでるんだ。又三郎ウソこがなぃもな。」「ああ あつう、風ふげばいいな。」「どごがらだが 風ふいでるぞ。」「又三郎ふがせだらべも。」 「なんだがおひさんぼゃっとして来たな。」
 空に少しばかりの白い雲が出ました。そしてもうだいぶのぼっていました。谷のみんなの家がずうっとしたに見え一郎のうちの木小屋の屋根が白く光っています。 路がはやしの中に入り、しばらく路はじめじめして、あたりは見えなくなりました。そして間もなくみんなは約束の湧水の近くに来ました。するとそこから、「おうい。みんな来たかい。」と三郎の高く叫ぶ声がしました。 みんなはまるでせかせかと走ってのぼりました。向うの曲り角の処に又三郎が小さな唇をきっと結んだまま三人のかけあがって来るのを見ていました。
 三人はやっと三郎の前まで来ました。けれどもあんまり息がはあはあしてすぐには何も言えませんでした。カスケなどはあんまりもどかしいもんですから、空へ向いて、「ホッホウ。」と叫んで早く息を吐いてしまおうとしました。すると三郎は大きな声で笑いました。「ずいぶん待ったぞ。それに今日は雨が降るかもしれないそうだよ。」「そだら はやぐいぐべすさ。おらまんつ水呑んでぐ。」 三人は汗をふいて、しゃがんでまっ白な岩からこぼこぼ噴きだす冷たい水を何べんも掬ってのみました。「ぼくのうちはここからすぐなんだ。ちょうどあの谷の上あたりなんだ。みんなで帰りに寄ろうねえ。」「うん。まんつ野原さいぐべすさ。」 
みんなが又あるきはじめたとき湧水は何かを知らせるようにぐうっと鳴り、そこらの木もなんだかざあっと鳴ったようでした。 四人ははやしの裾のやぶの間を行ったり岩かけの小さく崩れる所を何べんも通ったりして、もう上の原の入口に近くなりました。 みんなはそこまで来ると来た方からまた西の方をながめました。光ったり陰ったり幾通りにも重なったたくさんの丘の向うに川に沿ったほんとうの野原が、ぼんやり青くひろがっているのでした。「ありゃ、あいづ 川だぞ。」「春日明神さんの帯のようだな。」又三郎が言いました。「何のようだど。」一郎がききました。「春日明神さんの帯のようだ。」 「うな神さんの帯みだごとあるが。」「ぼく北海道で見たよ。」 みんなは何のことだかわからずだまってしまいました。
 ほんとうにそこはもう 上の野原の入口で、きれいに刈られた草の中に一本の大きな栗の木が立って、その幹は根もとの所がまっ黒に焦げて大きな洞のようになり、その枝には古い繩や、切れたわらじなどがつるしてありました。「もう少しいぐづどみんなして草刈ってるぞ。それがら馬の居るどごもあるぞ。」一郎は言いながら先に立って刈った草のなかのいっぽんみちをぐんぐん歩きました。 三郎はその次に立って、「ここには熊居ないから馬をはなして置いてもいいなあ。」と言って歩きました。 しばらく行くとみちばたの大きな楢の木の下に、繩で編んだ袋が投げ出してあって、沢山の草たばがあっちにもこっちにもころがっていました。 せなかに 。をしょった二匹の馬が、一郎を見て鼻をぷるぷる鳴らしました。
「アィな。居るが。アィな。来たぞ。」一郎は汗を拭いながら叫びました。「おおい。ああい。其処に居ろ。今いぐぞ。」 ずうっと向うの窪みで、一郎の兄さんの声がしました。 ひがぱっと明るくなり、兄さんがそっちの草の中から笑って出て来ました。「ゆぐ来たな。みんなも連れで来たのが。ゆぐ来た。戻りに馬こ連れでてけろな。今日ぁ、ひるまがらきっと曇る。オラもう少し草集めてシムがらな、うなだ あそばばあの土手の中さ入ってろ。まだ牧場の馬 にじゅっぴきばがり居るがらな。」 兄さんは向うへ行こうとして、振り向いて又言いました。「土手がら外さ出はるなよ。迷ってしまうづどあぶなぃがらな。ひるまになったら又来るがら。」「うん。土手の中に居るがら。」 そして一郎の兄さんは、行ってしまいました。
 そらにはうすい雲がすっかりかかり、太陽は白い鏡のようになって、雲と反対に馳せました。風が出て来てまだ刈ってない草は一面に波を立てます。一郎はさきにたって小さなみちをまっすぐに行くと、まもなくどてになりました。その土手のひととこちぎれたところに二本の丸太の棒を横にわたしてありました。コースケがそれをくぐろうとしますと、カスケが、「おらこったなもの外せだだど。」と言いながら かたっぽうのはじをぬいて下におろしましたのでみんなはそれをはね越えて中へ入りました。向うの少し小高いところにてかてか光る茶いろの馬がななひきばかり集まって、しっぽをゆるやかにばしゃばしゃふっているのです。「この馬みんな千円以上するづもな。来年がらみんな競馬さも出はるのだっじゃい。」
 一郎はそばへ行きながら言いました。 馬はみんないままでさびしくって仕様なかったというように一郎だちの方へ寄ってきました。 そして鼻づらをずうっとのばして何かほしそうにするのです。「ははあ、塩をけろづのだな。」みんなは言いながら手を出して馬になめさせたりしましたが、三郎だけは馬になれていないらしく気味悪そうに手をポケットへ入れてしまいました。「わあ又三郎馬オッカながるじゃい。」と悦治が言いました。 すると三郎は、「こわくなんかないやい。」と言いながら、すぐポケットの手を馬の鼻づらへ のばしましたが馬が首をのばして舌をべろりと出すと、さあっと顔いろを変えてすばやくまた手をポケットへ入れてしまいました。「わあい、又三郎 馬おっかながるじゃい。」悦治が又言いました。
すると三郎はすっかり顔を赤くしてしばらくもじもじしていましたが、「そんなら、みんなで競馬やるか。」と言いました。 競馬ってどうするのかとみんな思いました。 すると三郎は、「ぼく競馬何べんも見たぞ。けれどもこの馬みんな鞍がないから乗れないや。みんなで一匹づつ馬を追って、はじめに向うの、そら、あの大きな木のところに着いたものを一等にしよう。」「そいづおもしろな。」カスケが言いました。「しからえるぞ。牧夫に見っつけらえでがら。」「大丈夫だよ。競馬に出る馬なんか練習をしていないといけないんだい。」三郎が言いました。「よし、おらこの馬だぞ。」 「おら、この馬だ。」「そんならぼくはこの馬でもいいや。」 
みんなは柳の枝や萱の穂で、しゅうと言いながら馬を軽く打ちました。ところが馬はちっともびくともしませんでした。やはり下へ首を垂れて草をかいだり首をのばして、そこらのけしきをもっとよく見るというようにしているのです。 一郎がそこで両手をぴしゃんと打ち合わせて、だあ、と言いました。すると俄に、七匹ともまるでたてがみをそろえてかけ出したのです。「うまぁい。」カスケははね上って走りました。けれどもそれはどうも競馬にはならないのでした。第一、馬はどこまでも顔をならべて走るのでしたし、それにそんなに競争するくらい早く走るのでもなかったのです。
それでもみんなは面白がって、ダーダと言いながらいっしょうけんめいそのあとを追いました。 馬はすこし行くと立ちどまりそうになりました。みんなもすこしはあはあしましたが、こらえてまた馬を追いました。するといつか馬はぐるっとさっきの小高いところをまわって、さっき四人ではいって来たどての切れた所へ来たのです。「あ、馬ではる、馬ではる。押えろ、押えろ。」 一郎はまっ青になって叫びました。じっさい馬はどての外へ出たのらしいのでした。どんどん走って、もうさっきの丸太の棒を越えそうになりました。
一郎はまるであわてて「どう、どう、どうどう。」と言いながら一生懸命走って行ってやっとそこへ着いてまるでころぶようにしながら手をひろげたときは、もう二匹はもう外へ出ていたのでした。「はやぐ来て押えろ。はやぐ来て。」一郎は息も切れるように叫びながら丸太ん棒をもとのようにしました。三人は走って行って急いで丸太をくぐって外へ出ますと、二匹の馬はもう走るでもなく、どての外に立って草を口で引っぱって抜くようにしています。「そろそろど押えろよ。そろそろど。」と言いながら一郎はいっぴきのくつわについた札のところをしっかり押えました。
カスケと三郎がもういっぴきを押えようとそばへ寄りますと、馬はまるで驚いたようにどてへ沿って一目散に南の方へ走ってしまいました。「アィな、馬ぁ逃げる、馬ぁ逃げる。アィな。馬逃げる。」とうしろで一郎が一生懸命叫んでいます。三郎とカスケは一生懸命馬を追いました。 ところが、馬はもう今度こそほんとうに逃げるつもりらしかったのです。まるで丈ぐらいある草をわけて、高みになったり低くなったり、どこまでも走りました。
 カスケはもう足がしびれてしまって、どこをどう走っているのかわからなくなりました。 それから、まわりがまっ青になって、ぐるぐる回り、とうとう深い草の中に倒れてしまいました。馬の赤いたてがみと、あとを追って行く三郎の白いシャッポが終りにちらっと見えました。 カスケは仰向けになって空を見ました。空がまっ白に光って、ぐるぐる回り、そのこちらを薄い鼠色の雲が、速く速く走っています。そしてカンカン鳴っています。 カスケはやっと起きあがって、せかせか息しながら馬の行った方に歩き出しました。草の中には、今 馬と三郎が通ったあとらしく、かすかな路のようなものがありました。カスケは笑いました。そして、(ふん、なあに 馬 どこかで、こわくなってのっこり立ってるさ。)と思いました。 
そこでカスケは、一生懸命それをツけて行きました。ところがその路のようなものは、まだ百歩も行かないうちに、おとこえしや、すてきに背の高いあざみの中で、二つにも三つにも分れてしまって、どれがどれやら一向わからなくなってしまいました。カスケはおういと叫びました。 おうとどこかで三郎が叫んでいるようです。 思い切って、そのまん中のを進みました。けれどもそれも、時々キれたり、馬の歩かないような急な所を横様に過ぎたりするのでした。 空はたいへん暗く重くなり、まわりがぼうっと霞んで来ました。冷たい風が、草を渡りはじめ、もう雲や霧が、切れ切れになって、眼の前をぐんぐん通り過ぎて行きました。(ああ、こいつは悪くなって来た。みんな悪いことはこれからタカってやって来るのだ。)とカスケは思いました。
まったくその通り、俄に馬の通ったあとは、草の中で無くなってしまいました。(ああ、悪くなった、悪くなった。)カスケは胸をどきどきさせました。 草がからだを曲げて、パチパチ言ったり、さらさら鳴ったりしました。霧が殊にしげくなって、着物はすっかりしめってしまいました。 カスケは のど一杯叫びました。「一郎、一郎、こっちさこう。」 ところが何の返事も聞えません。黒板から降る白墨の粉のような、暗い冷たい霧の粒が、そこら一面踊りまわり、あたりが俄にシインとして、陰気に陰気になりました。草からは、もう雫の音がポタリポタリと聞えて来ます。
 カスケは、もう早く一郎たちの所へ戻ろうとして急いで引っ返しました。けれどもどうも、それは、前に来た所とは違っていたようでした。第一、アザミがあんまり沢山ありましたし、それに草の底にさっき無かった岩かけが、度々ころがっていました。そしてとうとう聞いたこともない大きな谷が、いきなり眼の前に現われました。すすきがざわざわざわっと鳴り、向うの方は底知れずの谷のように、霧の中に消えているではありませんか。 風が来ると、ススキの穂は細いたくさんの手をいっぱいのばして、セワしく振って、「あ、西さん、あ、東さん。あ、西さん。あ、南さん。あ、西さん。」なんて言っている様でした。 カスケはあんまり見っともなかったので、目をつぶって横を向きました。そして急いで引っ返しました。
小さな黒い道が、いきなり草の中に出て来ました。それは沢山の馬の蹄のあとで出来あがっていたのです。カスケは、夢中で、短い笑い声をあげて、その道をぐんぐん歩きました。 けれども、たよりのないことは、みちのはばが五寸ぐらいになったり、又三尺ぐらいに変ったり、おまけになんだかぐるっと回っているように思われました。そして、とうとう、大きなてっぺんの焼けた栗の木の前まで来た時、ぼんやり幾つにもワカれてしまいました。
 其処は多分は、野馬の集まり場所であったでしょう、霧の中に円い広場のように見えたのです。 カスケはがっかりして、黒い道を又戻りはじめました。知らないくさぼが静かにゆらぎ、少し強い風が来る時は、どこかで何かが合図をしてでも居るように、一面の草が、それきたっと みなからだを伏せて避けました。 空が光ってキインキインと鳴っています。それからすぐ眼の前の霧の中に、家の形の大きな黒いものがあらわれました。
カスケはしばらく自分の眼を疑って立ちどまっていましたが、やはりどうしても家らしかったので、こわごわもっと近寄って見ますと、それは冷たい大きな黒い岩でした。 空がくるくるくるっと白く揺らぎ、草がバラッと一度に雫を払いました。(間違って原を向う側へ下りれば、又三郎もおれも、もう死ぬばかりだ。)とカスケは、半分思う様に半分つぶやくようにしました。それから叫びました。「一郎、一郎、居るが。一郎。」 又明るくなりました。草がみな一斉に喜びの息をします。
「イサドの町の、電気工夫のワラスぁ、山男に手足ぃシバらえてたふうだ。」と いつか誰かの話したコトバが、はっきり耳に聞えて来ます。 そして、黒い路が、俄に消えてしまいました。あたりがほんのしばらくしいんとなりました。それから非常に強い風が吹いて来ました。 空が旗のようにぱたぱた光ってひるがえり、火花がパチパチパチッと燃えました。カスケはとうとう草の中に倒れてねむってしまいました。 そんなことはみんなどこかの遠いできごとのようでした。 もう、又三郎がすぐ眼の前に足を投げだして だまって空を見あげているのです。
いつかいつもの鼠いろの上着の上にガラスのマントを着ているのです。それから光るガラスの靴をはいているのです。 又三郎の肩には栗の木の影が青く落ちています。又三郎の影はまた青く草に落ちています。そして風がどんどんどんどん吹いているのです。又三郎は笑いもしなければ物を言いません。ただ小さな唇をつよそうにきっと結んだまま黙ってそらを見ています。いきなり又三郎はひらっとそらへ飛びあがりました。ガラスのマントがギラギラ光りました。ふとカスケは眼をひらきました。灰いろの霧が速く速く飛んでいます。 
そして馬がすぐ眼の前にのっそりと立っていたのです。その眼はカスケを怖れて横の方を向いていました。 カスケははね上って馬の名札を押えました。そのうしろから三郎がまるで色のなくなった唇をきっと結んでこっちへ出てきました。カスケはぶるぶるふるえました。「おうい。」霧の中から一郎の兄さんの声がしました。雷もごろごろ鳴っています。「おおい、カスケ。居るが。カスケ。」一郎の声もしました。カスケはよろこんでとびあがりました。「おおい。居る、居る。一郎。おおい。」 一郎の兄さんと一郎が、とつぜん、眼の前に立ちました。カスケは俄に泣き出しました。
「探したぞ。危ながったぞ。すっかりぬれだな。どう。」一郎の兄さんはなれた手付きで馬の首をだいて、もってきたくつわをすばやく馬のくちにはめました。「さあ、あべさ。」「又三郎びっくりしたべぁ。」一郎が三郎に言いました。三郎はだまって、やっぱりきっと口を結んでうなずきました。 みんなは一郎の兄さんについて、緩い傾斜を、二つ程昇り降りしました。それから、黒い大きな路について、しばらく歩きました。 稲光が二度ばかり、かすかに白くひらめきました。草を焼く匂がして、霧の中を煙がほっと流れています。 一郎の兄さんが叫びました。「おじいさん。いだ、いだ。みんないだ。」
 おじいさんは霧の中に立っていて、「ああ心配した、心配した。ああエがった。おおカスケ。さむがべぁ、さあはいれ。」 と言いました。カスケは一郎と同じように、やはりこのおじいさんの孫なようでした。 半分に焼けた大きな栗の木の根もとに、草で作った小さな囲いがあって、チョロチョロ赤い火が燃えていました。 一郎の兄さんは馬を楢の木につなぎました。 馬もひひんと鳴いています。「おおむぞやな。な、なんぼが泣いだがな。そのわろは金山堀のわろだな。さあさあみんな、団子たべろ。食べろ。な。いまこっちをやぐがらな。全体どこ迄行ってだった。」「ささながねのおりぐちだ。」と一郎の兄さんが答えました。
「あぶなぃがった。あぶなぃがった。向うさおりだら馬も人もそれっ切りだったぞ。さあカスケ、団子たべろ。このわろもたべろ。さあさあ、こいづも食べろ。」「おじいさん。馬おいでくるが。」と一郎の兄さんが言いました。「うんうん。牧夫来るどまだやがましがらな。したども、も少しまで。又すぐ晴れる。ああ心配した。おらも虎こ山の下まで行って見で来た。はあ、まんつえがった。雨も晴れる。」「今朝ほんとに天気えがったのにな。」「うん。又ユぐなるさ。あ、雨もって来たな。」 一郎の兄さんが出て行きました。天井がガサガサガサガサ言います。おじいさんが笑いながらそれを見上げました。
 兄さんが又 はいって来ました。「おじいさん。あかるぐなった。雨ぁ はれだ。」「うんうん、そうが。さあみんなよっく火にあだれ、おら又草刈るがらな。」 霧がふっと切れました。ひの光がさっと流れて入りました。その太陽は、少し西の方に寄ってかかり、幾片かの蝋のような霧が、逃げおくれて仕方なしに光りました。 草からは雫がきらきら落ち、総ての葉も茎も花も、今年の終りのひの光を吸っています。
 はるかな西の青い野原は、今泣きやんだようにまぶしく笑い、向うの栗の木は青い後光を放ちました。みんなはもう疲れて一郎をさきに野原をおりました。湧水のところで三郎はやっぱりだまって、きっと口を結んだままみんなに別れてじぶんだけお父さんの小屋の方へ帰って行きました。 帰りながらカスケが言いました。「あいづやっぱり風の神だぞ。風の神のこっこだぞ。あそごさ二人して巣食ってるんだぞ。」「そだなぃよ。」一郎が高く言いました。

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