資料 ---成人の機能性構音障害---

当科において2001年1月から2010年12月までの間に指導を終了した18歳以上(推測も含む)の機能性構音障害例

日本音調教育研究会東京発音教室構音矯正科 小森法孝

総数1080例

1.側音化構音例 (718例)

指導対象音

キシチニリ

265

キシチニ

22

キシチ リ

51

キ  ニリ

14

 シチニリ

23

キシチ

47

キ チ

2

キ  ニ

3

キ   リ

24

 シチニ

28

 シチ リ

18

   ニリ

2

46

 シ

4

 シチ

133

  チ

4

   ニ

2

    リ

13

ギャ行のみ

1

リャ行のみ

1

(上記のうち[s]も側音化しているもの)

(107)

[s]のみ

15

718

キを含むもの計 474
シを含むもの計 591
チを含むもの計 593
ニを含むもの計 359
リを含むもの計 410
[s]を含むもの計 122

上記のうち
キの他にケも含む例

113

キの他にクも含む例

3

ニの他にネも含む例

3

エ段全行にも及んでいる例

4

ウ段(ク、ス、ツ、ヌ、ユ、ル)にも及んでいる例

1

[s]に鼻渋面を伴う例

1

側音化以外のサ行構音障害を伴う例

194

 ※サ行障害の内訳は示さないが、割合は2.におけるものに準じる。

表中、キとはキ、ギ、キャ行、ギャ行、 シチとはシ、チ、ジ、シャ行、チャ行、ジャ行、 ニとはニ、ニャ行、 リとはリ、リャ行、 Sとはサ、ス、セ、ソ、ツ、ザ、ズ、ゼ、ゾ、 ケとはケ、ゲを言う。

イ、ヒ、ミ、ビ、ピ、ヤ、ユ、ヨの側音化はキ、ニ、リなどに伴って様々な程度のものが非常に多く認められるが、音質に歪みを与えていないものや個別に指導せずに改善するものも多く、統計は煩雑になるため計上しない。(イの側音化は側音化全体の30数パーセントの例に見られる。)

側音化時の視覚的特徴は唇の左右、上下への偏位、唇渋面、口角付近の皮膚の凹み、下アゴの偏位、硬直した舌端など。多くは噤黙時にも赤唇の左右不対称が観察される。舌の形状は棒状、三角柱、凸字状、凹字状、ゾウアザラシ顔面状など。捻りの程度はさまざま。

息が漏れる方向は右が多い。次いで左、双方向。唇の偏位は下唇主導が多く、息の方向と一致し、右が多い。双方向の場合は唇の偏位のないことも多い。下アゴの偏移が見られる場合はふつうは息、唇の逆方向となる。

 

2.側音化構音を伴わない、側音化以外のサ行構音障害 (294例)

種別

 
接歯性

82

うちシチも含むもの 73

歯間性

67

後方摩擦性※1

61

うちシチも含むもの 23

後方破裂的

2

唇歯性

41

鼻咽腔破裂

4

 
鼻咽腔摩擦

3

 
歯茎破裂的

2

 
歯茎破裂または破擦化

1

 
歯茎破裂+鼻咽喉破裂

1

 
歯茎破裂+後方摩擦

1

 
歯茎・後方二重調音

2

 
歯茎・後方三重調音

2

 
両唇・後方二重調音

1

 
接歯+後方弾き音

1

 
舌尖的歯茎接近音

3

 
歯茎両側面音※2

1

 
軟口蓋粗擦音的

1

 
両唇破裂音化

1

 
両唇摩擦音化

2

 
無摩擦性

11

 
シのみ後方化+鼻音化

1

 
シ、チのみ歯間化

1

 
ツ、ズのみ後方化

1

 
ツ、ズのみ破裂音化

1

 
   計 294  

 ※1硬口蓋〜咽頭間の摩擦によるもの。いわゆる口蓋化構音を含む。
 
※2非異常構音

(二種以上の特徴を示すものは珍しいものを除いて主な聴覚、視覚印象によって分類した。側音化の要素の大きいものは1.に入れた。)

 

3.ラ行構音障害 (1.2.4.と重複する例あり。)

種別
弱化
側面化
反り舌化
震え音化
鼻音化
破裂音化
奥舌弾き音的
歯間化
舌尖位置異常
舌背破裂音化
軟口蓋破裂音化
歯茎・軟口蓋二重調音
不定調音
リの唇音化
リの軟口蓋との二重調音
リャ行のジャ行化
音素異常

分類省略

105

105

 

4.その他 (1.2.3.と重複する例あり。)

種別

カ行の前方化・反舌・二重調音

21

タナ行の後方化・反舌・二重調音

24

タ行の両唇音化

1

タ行の声門破裂音化

1

タ、ダ、ナ行の歯間化

5

ダ行の弾き音化

1

カ行の無破裂

1

カ行の声門破裂音化

3

ヒの無摩擦

1

ヒの唇歯音化

1

ナ行の軟口蓋化

1

ニのみの後方化

5

シ、チ、ニの後方化

2

チのみの軟口蓋化

1

ダラ行の音素的混同

1

ザ行の破裂音化

2

ザダ行の交替・混同

3

74

 

総じて成人の機能性構音障害は側音化構音がもっとも多く、次いでサ行とラ行の構音操作不良、口蓋化構音と続き、声門破裂音、鼻咽腔構音はまれで、音の置換、省略はほとんど見られないと言える。


聴覚性、運動性、器質性の問題を含むものは省いた。
アナウンサーや類似職の構音指導が含まれるので軽微な接歯性サ行や弱化ラ行の例がやや多くなっていると思われる。
年齢及び性別による有意差は認められないので記載は省いた。
幼児、児童、生徒を含まない成人の統計であることに注意。

2011年以降については未集計だが傾向は概ね同様。


 

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