子供たちと自然

 子供たちが自然の中で遊ばなくなって、もう長い時間たっていると言われています。子供たちは自然の中で自然に生かされて育っていくという道筋を経ずに大きくなっていきつつあります。
 見渡す限りの草原で、あるいは山深い森の中で、顔いっぱいに風を受けながら大自然の大きさに圧倒されておののきつつものを思っていた子供たちと、全く人工的な環境と地に足の付かない生活の中で自然の意味を感じる機会もないままに世界を知った気持ちになっている今の子供たちと、そのどちらもが同じ種類の大人になっていくとは考えられません。
 単に昔と今とを比べてどちらがいい、悪いというのは意味がありません。古いから駄目、新しいからいいというのも間違っていますし、その逆もまた正しくないでしょう。しかし、現代の生活が失ってしまったものを回復しなければ、という観点ではなく、これからの日本がこれまでの伝統的日本とどうつながっていくのかという観点だけで考えてみても、そこになんとも落ち着かない、空漠たるものを感じてしまうのは私だけではないと思うのです。