風足


 稲田の上を風が渡ると風の足が見える。高さの揃った稲の葉の海を大小さまざまなうねり、窪みが渡っていくのだ。大きな窪みから小さな窪みがいくつも分かれて、蛇行しながら消えていく。大きなうねりもずっと向こうでふっと消える。

 かざあし(風足、風脚)というのは、あまあし(雨足、雨脚)と同じくその勢いを表わす語のようだが、もし風に足があるとすればこれがそうなのだろうと私は思う。

 次から次へと風の足が流れていく。
 大昔、何百年も前にここに田圃があったことは考えられる。それからずっと、毎年毎年この田圃に現れては消えていった無数の風たち。そして今吹いている風たち。それらの風たちは同じ風たちなのだろうか。それとも全く無縁同士の風たちなのだろうか・・・。